| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-49 (Poster presentation)
近年、プラスチックゴミによる環境汚染やマイクロプラスチックを食べた魚などによる健康被害が懸念されている。特に、レジ袋や食品トレーなど、一度利用されただけで捨てられてしまうプラスチックの生産量が、プラスチックごみの増加に大きく影響している。これらの問題を解決するために、ミルワームがもつと言われるプラスチック分解能力に着目し、ミルワームによるプラスチック分解のしくみを解明することを本研究の目的とした。先行研究では、ミルワームがポリスチレンを摂食して成長した(Rob Jordan 2015)、ミルワームがポリスチレン(PS)とポリ塩化ビニル(PVC)を分解した(埼玉県立松山高等学校)とされていた。そこで、本研究では、「ミルワームの消化管内に生息する細菌がプラスチックを分解しており、ミルワームはその分解産物を栄養源としている。」と仮説を立て、ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫であるジャンボミルワームのプラスチック分解能力について、研究を行なった。まず、ミルワームがプラスチックのみを食べて生育できることを検証するためにPS、PVC、木くずを与えた実験群と何も与えない実験群を設定し飼育実験を行なうと、PS、PVCに食痕はあったが何も与えない実験群よりも体重が減少していた。また、消化管通過前後のプラスチック片を電子顕微鏡(TM3030)で観察した結果、変形や溶解は見られなかった。腸内細菌を培養し、グラム染色による同定を行った結果から、2種類の細菌がミルワームの消化管に生息しており、消化管の位置によって細菌叢は異なることが分かった。さらに、PSやロウソクなど、数種類の餌を与えて飼育したミルワームの腸内細菌を調べると、腸内細菌叢に違いが見られた。これらの結果から、研究に用いたツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫はプラスチックを常食としておらず、プラスチックを分解する腸内細菌が十分に増殖していないため、プラスチックを分解して成長することができなかったと考えた。