| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S08-4  (Presentation in Symposium)

気候変動に伴う沿岸生態系と利用の変化
Coastal community shift and use under climate change

*熊谷直喜(国立環境研究所)
*Naoki KUMAGAI(NIES)

気候変動の進行に伴い、地球上の生物、とくに海洋生物の分布は大きく変動し再編成しつつある。このような分布変化が生態系の基盤となる生物群において生じると、生物間相互作用を通じ、その生態系に関連する多くの生物へと気候変動影響が波及しうる。その影響は、群集・生態系構造の変化のような生態学的な変化のみならず、産業的に有用な生物における変化を通じて社会経済へも波及しうるだろう。例えば、大型海藻と造礁サンゴはそれぞれ沿岸生態系において一次生産を担いつつ生態系基盤を構成する重要な生物群だが、両者は暖温帯においては生息空間を巡る競争関係にあり、気候変動のもとでその世界的な分布域が変化しつつある。これまでに演者らは日本の温帯全域を対象に、大型海藻と造礁サンゴの分布、植食性魚類の海藻食害の記録について、過去からの出現記録の収集・整備を行った。そして、これらの記録を用いた時空間統計モデリングによって、熱帯からの海流に乗って分布を拡げた魚類による海藻食害が主要な駆動因となり、海藻藻場から造礁サンゴ群集への群集移行が進行することを明らかにした。一方、この群集移行の進行に伴い、海藻藻場を好む生物が減り、代わりに造礁サンゴ群集を好む南方の生物が増えるなどの二次的な変化も生じている。すると従来その土地で食用としていた魚種が獲れにくくなり、また造礁サンゴや南方の色鮮やかな生物はダイビングなどの新たな観光資源となるため、沿岸生態系に生じる気候変動影響は周辺地域の人々の社会生活にさえも波及し得る。本講演では、これらの海藻藻場群集と造礁サンゴ群集で生じている変化やメカニズム、社会経済的影響、および気候変動適応策について紹介する。


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