| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S21-10  (Presentation in Symposium)

日本を中心としたアジア域の森林における土壌メタン吸収の過去、現状と将来
Past, Present and Future Methane Sink of Japanese and Asian Forest Soils

*梁乃申(国立環境研), 寺本宗正(鳥取大学), 高木健太郎(北海道大), 平野高司(北海道大), 近藤俊明(国際農研), 小嵐淳(原子力機構), 安藤麻里子(原子力機構), 高木正博(宮崎大学), 石田祐宣(弘前大学), Yiping ZHANG(XTBG), YF Derrick LAI(CUHK), Po-Neng CHIANG(Taiwan Univ.), 市井和仁(千葉大学), 山貫緋称(千葉大学), 孫力飛(国立環境研), 高橋善幸(国立環境研), 曾継業(国立環境研), Mohti AZIAN(FRIM)
*Naisen LIANG(NIES), Munemasa TERAMOTO(Tottori Univ.), Kentaro TAKAGI(Hokkaido Univ.), Takashi HIRANO(Hokkaido Univ.), Toshiaki KONDO(JIRCAS), Jun KOARASHI(JAEA), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Masahiro TAKAGI(Univ. of Miyazaki), Sachinobu ISHIDA(Hirosaki Univ.), Yiping ZHANG(XTBG), YF Derrick LAI(CUHK), Po-Neng CHIANG(Taiwan Univ.), Kazuhito ICHII(Chiba Univ.), Hina YAMANUKI(Chiba Univ.), Lifei SUN(NIES), Yoshiyuki TAKAHASHI(NIES), Jiye ZENG(NIES), Mohti AZIAN(FRIM)

欧米に比べ、有機炭素が豊富な日本を含むアジアモンスーン地域の森林土壌は、温暖化に対する長期的なCO2排出量(微生物呼吸)増進の応答が大きいことに加え、温暖化に伴う土壌の乾燥化でCH4吸収能が上昇する可能性も、土壌の劣化でCH4吸収能が低下する可能性も秘めている。しかし、CH4収支と土壌炭素動態の気候変動応答に関わる観測データの欠如は、将来予測に大きな不確実性を与えている。本研究では、前例のないアジア域を網羅する森林土壌におけるCH4吸収能の広域推定及び将来予測を行うために、国立環境研究所が開発した世界最大規模のチャンバー観測ネットワークを活用した多地点連続観測を実施した。
北海道最北端の針広混交林からマレーシア半島部の熱帯雨林までの広域トランセクトを縦断する12ヶ所の森林生態系を対象に、土壌CO2/CH4フラックスを長期連続測定するとともに、8ヶ所の森林において温暖化操作実験を行い、短期的気候変動や自然的・人為的攪乱、土地利用変化などが土壌有機炭素分解及びCH4吸収能に及ぼす影響を評価した。また、高解像度の日本森林土壌CO2/CH4フラックスマップの作成を目的として、ポータブル自動開閉チャンバーシステムを用いて日本全国を網羅する数十ヶ所の森林土壌CO2/CH4フラックスの測定キャンペーンを行った結果についても報告する。
本研究で得られた結果として、全国の森林土壌CH4吸収速度は2000年前後の既存データセット(年間ヘクタールあたり8.2~11.4 kg-CH4)に比べ1.5~2倍となった。本結果に基づいて概算した全国の森林における年間CH4吸収量は、農業活動によるCH4排出量の約50%に匹敵し、温暖化ポテンシャルに換算すると人為的なCO2排出量の約1%を相殺する。また、CH4吸収速度に対する温暖化効果は温度上昇1°C当たり約13%増大した。


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