| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S21-3  (Presentation in Symposium)

台風撹乱後の若齢落葉樹林における土壌メタンフラックスの時空間変動
Spatiotemporal variation in soil CH4 flux in a regrowing deciduous forest after a severe typhoon disturbance

*平野高司(北海道大), 坂口香帆(北海道大), 山下隼平(北海道大), 崔鋭(北海道大), 胡睿(北海道大), 孫力飛(国立環境研), 梁乃申(国立環境研), 寺本宗正(鳥取大学), 高木健太郎(北海道大), 石田祐宣(弘前大学), 安藤麻里子(原子力機構), 小嵐淳(原子力機構), 高木正博(宮崎大学), 近藤俊明(国際農研), 市井和仁(千葉大学), 高橋善幸(国立環境研)
*Takashi HIRANO(Hokkaido Univ.), Kaho SAKAGUCHI(Hokkaido Univ.), Syunpei YAMASHITA(Hokkaido Univ.), Rui CUI(Hokkaido Univ.), Rui HU(Hokkaido Univ.), Lifei SUN(NIES), Naisen LIANG(NIES), Munemasa TERAMOTO(Tottori Univ.), Kentaro TAKAGI(Hokkaido Univ.), Sachinobu ISHIDA(Hirosaki Univ.), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Jun KOARASHI(JAEA), Masahiro TAKAGI(Univ. of Miyazaki), Toshiaki KONDO(JIRCAS), Kazuhito ICHII(Chiba Univ.), Yoshiyuki TAKAHASHI(NIES)

 森林土壌が大気メタン(CH4)の主要な吸収源であることは認識されているが,土壌CH4フラックスの時空間変動は大きく,吸収量の定量化には観測データの蓄積が必要である。本研究では,自動チャンバーシステムによって観測された連続データを用いて,CH4フラックスの小スケールでの変動要因を明らかにすることを目的にした。
 北海道苫小牧市の森林で実験を行った。このサイトはカラマツ林であったが,2004年の台風による風倒害の後,シラカンバが優占する植生に変わった。2006年から土壌CO2フラックスの観測を行ってきたが,2020年7月にCH4フラックスの連続観測を追加した。土壌は火山性で,表土(A層)は15 cm程度と薄く,その下に火山礫等からなるC層が存在する。3処理区(対照(根あり),根切(根無し),植生(植生あり))を設け,各5反復でチャンバー(0.9×0.9 m2)を設置した。各チャンバーを順次開閉させ,1時間ごとのフラックスデータを取得した。また,各チャンバーで,地温(5 cm深)と土壌水分(10 cm深)を連続観測し,植生区のLAIを3~4週間おきに測定した。さらに,土壌の間隙率,炭素・窒素含有率およびバルク密度も測定した。なお,土壌水分からWFPS(水分飽和度)を算出した。2020年7~11月,2021年4~11月の観測データから,ランダムフォレスト回帰(RFR)によりCH4フラックスの変動要因に関する解析を行った。
 全ての処理区において土壌はCH4吸収源であったが,吸収量は植生区>対象区≒根切区であった。この差は,主に土壌水分(WFPS)の差によると考えられる。植生区では常にWFPSが低かった。RFRの結果,全処理区においてWFPSの重要度が高かったが,地温とバルク密度の重要度も高かった。土壌の物理性がCH4フラックスの空間変動に関わることが示唆された。


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