| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S21-3 (Presentation in Symposium)
森林土壌が大気メタン(CH4)の主要な吸収源であることは認識されているが,土壌CH4フラックスの時空間変動は大きく,吸収量の定量化には観測データの蓄積が必要である。本研究では,自動チャンバーシステムによって観測された連続データを用いて,CH4フラックスの小スケールでの変動要因を明らかにすることを目的にした。
北海道苫小牧市の森林で実験を行った。このサイトはカラマツ林であったが,2004年の台風による風倒害の後,シラカンバが優占する植生に変わった。2006年から土壌CO2フラックスの観測を行ってきたが,2020年7月にCH4フラックスの連続観測を追加した。土壌は火山性で,表土(A層)は15 cm程度と薄く,その下に火山礫等からなるC層が存在する。3処理区(対照(根あり),根切(根無し),植生(植生あり))を設け,各5反復でチャンバー(0.9×0.9 m2)を設置した。各チャンバーを順次開閉させ,1時間ごとのフラックスデータを取得した。また,各チャンバーで,地温(5 cm深)と土壌水分(10 cm深)を連続観測し,植生区のLAIを3~4週間おきに測定した。さらに,土壌の間隙率,炭素・窒素含有率およびバルク密度も測定した。なお,土壌水分からWFPS(水分飽和度)を算出した。2020年7~11月,2021年4~11月の観測データから,ランダムフォレスト回帰(RFR)によりCH4フラックスの変動要因に関する解析を行った。
全ての処理区において土壌はCH4吸収源であったが,吸収量は植生区>対象区≒根切区であった。この差は,主に土壌水分(WFPS)の差によると考えられる。植生区では常にWFPSが低かった。RFRの結果,全処理区においてWFPSの重要度が高かったが,地温とバルク密度の重要度も高かった。土壌の物理性がCH4フラックスの空間変動に関わることが示唆された。