| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S21-4  (Presentation in Symposium)

白神山地の広葉樹林における土壌メタンフラックスの特性
Characteristics of soil methane flux in broad-leaved forest of the Shirakami Mountains

*石田祐宣(弘前大学), 孫力飛(国立環境研), 梁乃申(国立環境研), 寺本宗正(鳥取大学), 平野高司(北海道大), 高木健太郎(北海道大), 高木正博(宮崎大学), 近藤俊明(国際農研), 小嵐淳(原子力機構), 安藤麻里子(原子力機構), 市井和仁(千葉大学), 高橋善幸(国立環境研)
*Sachinobu ISHIDA(Hirosaki Univ.), Lifei SUN(NIES), Naisen LIANG(NIES), Munemasa TERAMOTO(Tottori Univ.), Takashi HIRANO(Hokkaido Univ.), Kentaro TAKAGI(Hokkaido Univ.), Masahiro TAKAGI(Univ. of Miyazaki), Toshiaki KONDO(JIRCAS), Jun KOARASHI(JAEA), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Kazuhito ICHII(Chiba Univ.), Yoshiyuki TAKAHASHI(NIES)

 温室効果ガスであるCH4はCO2に比べ大気中の存在量は濃度比で1/200程だが、単位量当たり約28倍の温室効果を持つため、その動態を把握することは将来の気候変動予測にとって重要な課題である。特に森林土壌はCH4の重要な吸収源となっているが、土壌の物理化学的性質や気候によってその吸収能がどの程度変わり得るのか、実測ベースで理解する必要がある。
 本研究では、冷涼かつ多雪地帯である白神山地の広葉樹林を対象とし、土壌CO2/CH4フラックスの変動要因となる環境因子(地温、土壌水分)に対する感度を明らかにすることを目的とした。本サイトの土壌は褐色森林土であり、場所によって白頭山起源の火山灰が混在する報告もある。観測サイト内に、対照区(土壌呼吸)、根切区(微生物呼吸)、温暖化区(温暖化した微生物呼吸)の3処理区を設け、無雪期に大型自動開閉式チャンバーシステムで土壌CO2/CH4フラックスの連続観測を実施した。解析対象期間は、2021年4月25日~同年11月16日の206日間である。
 解析の結果、各区のCO2排出速度およびCH4吸収速度と地温および土壌水分との間には、全てに有意な相関関係が見られたが、根切区に対して温暖化区で環境因子に対するCO2排出速度およびCH4吸収速度への感度が弱まる傾向があった。CO2排出速度およびCH4吸収速度に対する相関はともに土壌水分よりも地温の方が強かった。CH4吸収速度は一般的に土壌水分との相関が強いが、本対象期間は降水量が少なく、地温と土壌水分に強い相関があり、見かけ上の関係である可能性がある。よって、観測を継続し特性を見極める必要がある。本サイトにおける解析対象期間の積算土壌CO2排出量は、温暖化区、対照区、根切区の順で多く、9.3~14.6 tC ha-1であった。一方、同積算土壌CH4吸収量は対照区、温暖化区、根切区の順で多く、10.9~15.4 kgCH4 ha-1であった。本サイトの温暖化効果は、CO2排出速度では温度上昇1℃当たり+17%に対して、CH4吸収速度では約+7.3%/℃と小さかった。


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