| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S21-8 (Presentation in Symposium)
森林や農地に代表される陸域生態系の土壌は、大気における分解を除くと、CO2の約28倍の温室効果を持つCH4の唯一かつ重要な吸収源となっており、その吸収能はCH4を炭素源・エネルギー源としてCH4の分解に寄与するメタン資化細菌や、CO2を基質としてCH4を合成するメタン生成細菌など、土壌に存在する土壌微生物によって強く影響を受ける。そのため、温暖化や植生の違いがこれら土壌微生物に及ぼす影響を評価し、そのメカニズムを解明することは気候変動予測の不確実性の低減や、植林や森林管理等によるメタン削減の実現において重要である。
本研究では、温暖化操作が施された5つのサイトを含め、大型マルチ自動開閉チャンバーシステムを用いて土壌CH4/CO2フラックスが観測されてきた国内の8つの森林(天塩2サイト、苫小牧、白神、つくば、富士北麓、広島、宮崎)において、メタン生成細菌やメタン資化細菌を含む土壌微生物を対象に、遺伝解析手法を用いて生物量や種組成を把握することで、温暖化に対して土壌微生物相がどのような応答を示し、結果として土壌のメタン吸収能がどう変動するのか、また、こうした温暖化応答は植生によって異なるのかといった疑問の解明を試みた。
その結果、①温暖化に伴う土壌の乾燥により、嫌気性細菌であるメタン生成細菌量が減少すること、②メタン生成細菌量の減少によって温暖化サイトではメタン吸収能が高まること、③こうした傾向はサイト間で大きく異なることなど、土壌メタン吸収能の温暖化応答メカニズムの一部が明らかとなった。