| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S21-9 (Presentation in Symposium)
大気ー陸域生態系間のCO2等のフラックスの広域推定には、AsiaFluxなどの観測ネットワークが充実したこともあり、機械学習を用いた経験的な手法が広く利用されるようになってきた。土壌呼吸については、統一的な観測手法の確立の難しさなどから、データベース化は進められているものの、統一化されたデータセットは入手が難しく、広域推定においても様々な不確実性が残っていた。
本研究では、国立環境研究所らのグループによる統一された観測手法・データ処理手法によるアジア域のチャンバー連続観測ネットワークを利用することにより、まずは、日本域の土壌呼吸量の広域推定を行った。観測ネットワークとして8地点のサイトデータを用い、MODISデータを中心とする衛星観測データセット、気温・地温・土壌水分量といった陸面データセットを入力として機械学習法の一つであるランダムフォレスト法を用いて土壌呼吸の広域推定を試みた。さらに、既存の各種推定結果について、経験的な手法から数値モデルによる手法までの幅広いデータを収集して比較した。
これらの推定によれば、8日単位の土壌呼吸量については、R2=0.68など妥当な推定ができた。また、年間値については、R2=0.25程度と改善の余地が多く残っている。一方、土壌呼吸量と光合成量は相互にある程度の相関があると予想されるが、土壌呼吸量と大気ー陸面CO2フラックスを同時測定しているサイトにおいては、光合成量と土壌呼吸量の位相が異なり、機械学習による土壌呼吸の推定では、土壌呼吸の観測値に近い推定となっていた。本モデルを広域に展開し、2006-2018年の土壌呼吸量の時空間変動を解析したところ、今回の推定値は、複数の数値モデルの推定値の平均値に近い値であった。現在、他の経験的な手法との比較をはじめ、様々な観点で得られた土壌呼吸量の時空間変動を解析しており、その結果をシンポジウムでは報告する。