| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


自由集会 W15-2  (Workshop)

宿主免疫系ー微生物間における相互作用の理論研究
Mathematical modeling and analysis of the interaction between host immune system and microbiome

*原朱音(北海道大学)
*Akane HARA(Hokkaido University)

共生微生物は宿主と複雑な相互作用を行いながら、独自の生態系を築き繁栄している。ヒトの場合は、腸内微生物叢をはじめとする様々な共生微生物が、宿主免疫系などにはたらきかけ、健康―疾患発症に影響を及ぼすことが解明されつつあり、医療面や健康促進への応用を視野に入れた共生微生物解析が盛んに行われている。社会性動物や、ヒトのように集団を作って生活する動物では、個体どうしが密接に関わり合いながら集団生活を営む構造を発達させたために、病原体感染に対する防除が重要な対策となる。先行研究では、真社会性昆虫のネットワーク構造が病原体感染により変化するという報告がある[1]。また、真社会性昆虫において共生微生物が病原体の感染防除に寄与することが示唆された[2]。さらに、アリのある種において、特定のカーストに特徴的にみられる細菌分類群が発見され [3]、共生微生物叢には同種内でも差異があることが示唆された。
  上記のアリのカースト間のような、行動様式の異なる個体間での微生物叢の差異について、共生微生物の宿主側免疫への影響を考慮する切り口での説明可能性を探るため、本研究では数理モデル解析を行う。数理モデルでは、(1)同種でも行動様式の異なる2種類の集団と、(2)病原体感染・無感染の状態、(3)宿主に病原体への抵抗性を与える共生細菌の有無の状態を仮定し、これらの集団の動態を記述し、共生微生物叢の集団間差異が現れる理論的条件を導いて議論する。そして、集団で生活する動物における、個体の行動様式・病原体感染動態・共生微生物による免疫系への影響を結ぶ動態を記述する理論を構築する。
参考文献:[1] Stroeymeyt et al., (2018) Science; [2] Inagaki and Matsuura, (2018) Sci. Nat.; [3] Shimoji et al., (2021) ISME Communications.


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