| 要旨トップ | ESJ69 自由集会 一覧 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


自由集会 W18  3月18日 16:30-18:00 Room G, オンライン開催/見逃し配信対応

「論文詩」──科学コミュニケーションツール
Scientific “Thesis Poetry": a Tool for the Communication of Science

多田満(国立環境研究所)
Mitsuru TADA(National Institute for Environmental Studies)

理論物理学者の湯川秀樹(1907-1981)はエッセイ「詩と科学」(1946 年)のなかでつぎのように述べている。「詩と科学とは同じ所から出発したばかりではなく、行きつく先も同じなのではなかろうか。(中略)そればかりではない。二つの道は時々思いがけなく交叉することさえあるのである」。「科学者とはつまり詩を忘れた人である。詩を失った人である。そんなら一度うしなった詩はもはや科学の世界にはもどって来ないのだろうか」。よって、研究者が科学論文を科学と「交叉する」詩によって表現することは、科学を知識としてのみ扱うのではなく、文化として根づかせるためのツールとなりうるのではないだろうか。
論文の内容をもとに表現した詩(後述の論文詩)を誰かに伝え、会話が弾めば、そこに科学コミュニケーションは成立することになる。このような社会で共有される詩は、市民の科学リテラシーを形成、ならびに向上させる一助(ツール)となるものと考えられる。そのことで人びとは、科学と科学者をより身近なものと感じ、科学と科学者に共感することもできるのではないだろうか。
そこで本集会では、まず、原著論文 の形式(IMRaD: Introduction, Method, Result, Discussion)をもとに「経験的な論理」と「個人的な論理」により作成する詩のことを「論文詩」とよび、その定型的な論文詩の作成手順を提案する。つぎに以前、鳥類の生態学分野で発表した論文に基づいて、多様性をテーマに日本語と英語により作成した2つの論文詩を紹介する。さらに2020年4月6日、グループFacebookにより開設した科学詩研究会の活動について報告する。最後にこれらの活動を通して、生態学分野における「論文詩」による今後の取り組みの展望について議論をおこなう。

[W18-1]
定型的な「論文詩」の作成について *多田満(国立環境研究所)
The creation of a standard “thesis poem" *Mitsuru TADA(NIES)


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