| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


第10回 日本生態学会奨励賞(鈴木賞)/The 10th Suzuki Award

魚類における適応進化と種分化の再現性
Repeatability of adaptation and speciation in fishes

山﨑 曜(国立遺伝学研究所)
Yo Yamasaki(National Institute of Genetics)

類似した環境に置かれた異なる集団や種において同様の進化が繰り返し生じる現象は平行進化,あるいは収斂進化と呼ばれる.進化研究では,個々の進化イベントに反復が存在しない場合が多く,再現性や一般性に欠けると批判されることがある.しかし平行進化では擬似的な反復を比較することで科学的な説得力を強めることができる.そのため平行進化を研究することは,過去の進化現象の記載に加えて,進化の法則性の解明にも大きく貢献しうる.そこで私はこの平行進化が一体どのようなパターンで,またどのような生態学的,あるいは遺伝学的なメカニズムで生じるのかに強い関心を持ち,魚類において繰り返し生じた海域から淡水域への適応と種分化を主な対象として研究してきた.
まずハゼ科ヨシノボリ属において,淡水進出に伴う種分化と形質進化が属内で繰り返し起きていることを発見した.そしてこの種分化の起きる確率が,生息する生態系の大きさと正の相関を示すことを見出した.この結果は種分化の発生が環境変数から予測可能な場合があることを示している.
次にトゲウオ科魚類において種分化の進行プロセスの一端を明らかにした.トゲウオ科は世界各地で平行的に種分化したことがよく知られる.しかし先行研究の多くは分化が比較的浅い種を対象とし,生殖隔離が完成する間近までを含めた種分化過程の全体像は未解明だった.そこで種分化後期にある二種間の特徴を全ゲノム解析に基づき解明し,様々な種分化段階にあるトゲウオ科の他の種ペアと比較した.その結果,遺伝的分化の進行は直線的ではなく,急激に上昇する転換点が存在する可能性が示された.
本講演ではこれらの研究に加え,現在進めている平行進化の遺伝的基盤に関する研究も合わせて紹介し,魚類の平行進化研究がもたらす洞察について議論したい.


日本生態学会