| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) C01-09 (Oral presentation)
顕微鏡画像に基づく細胞表現型の定量化は,多様な生命動態についての基礎的な情報を提供する.遺伝的背景の差異や様々な化学的・生理的刺激に対するミクロスケールでの変化は生態学においても重要である.本研究では,細胞の多重染色細胞の多重染色顕微鏡画像を用いたハイコンテントスクリーニング(HCS)において,深層距離学習を用いて細胞表現型空間を推定することを目的とし,得られた細胞特徴を用いてHCSにおける下流タスクが遂行できるかを確認した.HCSにおいて,複数の蛍光マーカーを用いた細胞画像ベースのプロファイリングは,疾患関連の表現型の特定やメカニズムの理解,投与した化合物の活性や作用機序の予測などに適用される.細胞画像は大規模かつ複雑で,手作業による解釈は困難であるものの,近年のコンピュータビジョン技術,特に深層学習技術の進歩で大規模な細胞形態情報の抽出が可能になった.しかし,一般に画像処理を行う深層学習モデルは大規模なRGB画像の事前学習によって特徴表現の獲得といった汎用性の向上が求められるが,顕微鏡画像との画像空間の分布の違いや,未知の細胞形態特徴を包括する表現空間の抽出の困難が依然として課題である.本研究は,表現型特徴の抽出に注目し,距離学習を用いて解釈性の高い細胞表現型空間に投影する深層学習モデルを提案する.提案モデルは,大規模なRGB画像で事前学習された後に,距離学習によって特定のセルスクリーニング画像内で化合物を予測するように表現学習を行い,未知の化合物の作用機序の予測で精度検証を行った.この表現学習により,特定の顕微鏡画像ドメインに特化した細胞の表現を抽出すること撮影条件といったドメインに左右されず,得られた細胞表現型空間がHCSにおける下流タスクで効果的かつ高い解釈性があることを示す.