| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-04  (Oral presentation)

琵琶湖におけるオオバナミズキンバイ対策:駆除後の巡回の必要性と評価【B】
Necessity of patrol after removal in the control of water primrose in Lake Biwa, Japan【B】

*中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館)
*Katsuki NAKAI(Lake Biwa Museum)

滋賀県・琵琶湖では、2009年に142㎡のオオバナミズキンバイ群落が確認され、以後、本種は南湖周辺に急速に拡大し、生育面積を増加させていった。これを受けて、2014年度には本種(亜種ウスゲオオバナミズキンバイ、以下「オオバナ」と略記。)にナガエツルノゲイトウとミズヒマワリを対象に加えた侵略的外来水生植物への対策事業に着手し、水草刈取り船や建設機械などの機械力を導入して大規模な駆除作業を行うことで、オオバナの年度末総生育面積を初めて縮減させた。しかし、翌2015年度には、新規群落の急増に加えて駆除箇所からの大規模な再生により生育面積が大幅に増える深刻な「リバウンド」に直面した。この危機的状況への対応として、2016年度からは、「機械駆除と人力駆除の併用により取残しを最小限にすること」と、「駆除後に定期的に巡回して再生を抑えること」の2つの基本方針を定め、事業規模を大きく拡大する財政支援を得て対策を進めてきた。その結果、オオバナの年度末の総生育面積は3ヶ年連続して大幅に縮減し、事業の主軸は大規模な駆除から巡回による再生・回復の未然防止へと移り、低密度状態を継続させている。その結果、駆除量や生育面積は大幅に減少した一方で、事業対策経費は徐々にしか減らすことができず、わずかな駆除を行うのに膨大な経費をかけているように受け止められかねない状況となってきている。今回は、琵琶湖のオオバナ等侵略的外来水生植物への対策のこれまでの経緯を概観するとともに、事業を継続するなかで気象イベント等による生育範囲の拡大への対応として、巡回対象箇所が少しずつ増加しながらも、生育面積や対策経費の増加を抑えている対策状況を紹介する。そして、駆除後に積極的に巡回を行うことにより、残存や漂着からの再生個体を早期除去することの重要性について指摘したい。


日本生態学会