| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-06  (Oral presentation)

山口市椹野川流域におけるヌートリアの 環境利用と行動評価
Habitat use and behavior evaluation of the Nutria in the Fushino River Basin, Yamaguchi City

*渡辺伸一(リトルレオナルド社), 松本哲郎(山口県農林総合技術)
*Shinichi WATANABE(Little Leonardo Co.), Tetsurou MATSUMOTO(Yamaguchi Technology Center)

ヌートリアは南米原産の大型齧歯類である。現在は西日本の河川や湖沼に面した陸域に生息しており、在来植物や水耕栽培植物への食害が各地で報告されている。全国的に本種の捕獲駆除が実施されているが、より効果的な駆除を行うためにも、本種の生息環境や行動生態を詳しく知る必要がある。本研究では、山口市椹野川流域で捕獲したヌートリアにバイオロギング機器を装着して、ヌートリアの環境利用と行動を評価する手法の開発を目的とした。
2021年1月から2023年2月までに、計115個体にバイオロギング機器(GPSロガー、GPS送信機、DTAロガー、VHF発信器)を背中の体毛に接着剤で装着した。GPSロガーは3分間隔で個体の位置を記録し、GPS送信機はLTE-M通信を使用して1または2時間間隔で個体の位置を送信した。DTAロガーは、深度・温度を1Hz、三軸加速度を8Hzで記録した。GPSにより測位した位置情報からは、活動と行動圏サイズの指標として、1日当たりの総移動距離と最大移動距離、記録期間全体の行動範囲に含まれる水域面積と河川長を算出した。また、GPSの測位状況から休息場所と巣穴を特定して、それらの滞在時間を計測した。DTAロガーのデータからは、以下のように活動と水辺環境の利用に関する指標を算出した。加速度データの高周波成分をもとに活動と休息に分け、ピリオドグラム法により活動周期を推定し、夜間に占める割合(夜間活動率)を個体ごとに算出した。また、加速度の周波数成分から体軸角度を計測し、温度・深度データと合わせて、遊泳および潜水行動を抽出して、その発生頻度と継続時間を算出した。装着機器は再捕獲して回収するか、VHF発信器により脱落した装置を回収した。装着個体中86個体から機器を回収して、有効なデータを得た。本講演では、得られたデータをもとに行動圏サイズ・活動の周期性・水辺利用について、雌雄・季節・調査地の環境特性との関係について分析した結果を報告する。


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