| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-08  (Oral presentation)

奈良県吉野川における特定外来生物コクチバスの個体数推定と低密度管理に向けた研究
Population estimation of invasive alien species smallmouth bass in the Yoshino river Nara Prefecture Japan  and efforts toward low density management

*殿河拓実, 河内香織(近畿大学院)
*Takumi TONOGAWA, Kaori KOCHI(kindai graduate school)

コクチバスMicropterus dolomieu(Lacepede,1802)は北米大陸原産の肉食性淡水魚である。日本では2005年より特定外来生物に指定されているが、密放流により現在でも生息域を拡大している。近年奈良県吉野川においても本種の生息が確認され、2020年度から継続して行ってきた調査により、定着し繁殖していることが明らかとなった。本研究では吉野川のコクチバスの低密度管理に向けた足がけとして個体数推定を行った。調査は600 mの区間において河道の瀬、淵、ワンドでそれぞれ3反復ずつ、全長20mの刺し網2本を河川縦断方向に設置し、投網を用いて区画内のコクチバスを捕獲した。瀬で50個体、淵で160個体、ワンドで68個体の合計278個体のコクチバスを捕獲した。この結果を用いてプログラムCAPTUREにより調査区間(45223 ㎡)内の推定個体数を算出したところ11642個体という結果となった。この数字は他の文献の結果や毎週の調査時の値と比較して妥当な数字と判断した。今後は潜水調査も並行して実施し目視での確認を行うことで推定個体数の信頼度を上げ、今年度実施できなかった区間でも個体数推定を行う予定である。また、産卵期には9つの産卵床を発見し卵の除去や親魚の捕獲を行った。全ての産卵床に共通して流速があり、周囲に遮蔽物が存在していることが明らかとなった。これらの結果より、来年度はより効率的に産卵床を探索し駆除することが可能になると考えられる。越冬地の特定では吉野川の大規模な淵で魚群探知機と釣りを組み合わせた方法での採捕を検討している。冬期のコクチバスは産卵を控えているため、駆除することで個体数を抑制する効果が得られる。上記の駆除を継続的に実施していくことでコクチバスの密度を減少させ、吉野川におけるコクチバスの管理に繋げたい。


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