| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-09  (Oral presentation)

愛知県矢作川における外来魚チャネルキャットフィッシュの全出現記録に基づく現状把握
Assessing the current status of non-native channel catfish in the Yahagi River based on all occurrence records since its invasion

*吉田誠(国立環境研究所), 山本大輔(豊田市, 矢作川水族館), 酒井博嗣(豊田市, 矢作川水族館)
*Makoto A. YOSHIDA(NIES), Daisuke YAMAMOTO(Toyota City, Yahagi River Aquarium), Hirotsugu SAKAI(Toyota City, Yahagi River Aquarium)

近年,国内の複数の水系において特定外来生物チャネルキャットフィッシュIctalurus punctatusの分布拡大が報告されている.矢作川水系では,2005年に本種の侵入が確認されて以降,地元団体による採集調査により中流部の阿摺ダム・越戸ダム周辺で多数の個体が採捕されてきた.採捕数は2010年をピークに減少し,2014年に採捕された2個体が水系内で最後の記録とされている.しかし同年以降,水系内で同様の調査は行われず,本種の現在の生息状況は不明である.そこで本研究では,既往文献および上述した過去の調査データの精査に加え,聞き取り調査により本種の採捕情報を収集し,水系内の確実な出現記録を整理した.また,過去に本種が多数採捕された阿摺ダム・越戸ダムにおいて延縄を用いた採集調査をおこない,現在の生息状況を確認した.
資料精査および聞き取り調査により,2005年から2022年にかけて,阿摺ダム湖(河口から約53km上流)から矢作古川分派点(同約13km上流)の区間で採捕された122個体分の確実な出現記録が確認された.2021年6–11月に阿摺・越戸の両ダムで各2回おこなった採集調査では,本種が阿摺ダムで3個体(全長28–34cm),越戸ダムで5個体(同54–73cm)採捕された.両水域を合計した採捕数は2010年および2012年に次いで過去3番目に多く,また,延縄1針あたりの採捕数(CPUE)は2009年に次いで過去2番目に大きかった.体長から推定した採捕個体の年齢は,阿摺ダムの3個体が2–5歳,越戸ダムの5個体が7歳以上で,前者は2016年以降,後者は2014年以前に生まれた個体と考えられた.
以上の結果から,矢作川には現在も本種が生息・再生産しており,また,今回調査した両ダム周辺では,ピーク時と同水準にまで個体数が回復していると推察された.


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