| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) C03-03  (Oral presentation)

食糞性コガネムシの腸内DNAを用いた哺乳類モニタリング手法の開発
Development of mammals monitoring with using intestines DNAs of coprophagous scarab beetle

*吉田直樹(豊島区), 岸茂樹(農研機構)
*Yoshida NAOKI(Toshima-ku), Shigeki KISHI(NARO)

 野生哺乳類のモニタリング調査は、需要が大きい反面、しばしば大きなコストがかかることが知られている。本研究では食糞性コガネムシ類(以下フンチュウ)を用いた新たな哺乳類モニタリング手法の開発を目指している。フンチュウは主に哺乳類の糞を餌として生活をしているため、その体内や体表には哺乳類のDNAが残存していると考えられる。これまで我々は千葉県でフンチュウを採集し、フンチュウ腸内のDNAをショットガンシーケンスで調べたところ、シカとキョンを含む数種の哺乳類のDNAが残存していることを示した。
 そこで我々は今回、より効率的かつ正確に哺乳類種を特定するため、12S/16Sメタゲノム解析を実施した。調査地として、1)シカ科の侵入種キョンの分布が拡大している千葉県、2)哺乳類レッドリストに掲載されている希少種ツシマヤマネコが生息する対馬、3)発表者の地元である愛知県、の3ヶ所を対象として、ヒト糞を用いたベイトトラップによりフンチュウを採集した。フンチュウ腸内容物からDNAを抽出・精製した後、哺乳類ミトコンドリアの12S、16S rRNA部分領域を対象として設計したユニバーサルプライマーを用いてPCRを実施した。その増幅産物を次世代シーケンスして哺乳類ミトコンドリアゲノムデータベースに対してBlast解析を行った。各調査地のフンチュウから各種哺乳類に相当する配列が得られたことを報告するとともに、その検出・解析方法について議論する。フンチュウはトラップで簡単に採集できるので、本手法は希少種や害獣など多くの哺乳類に活用できると考えられる。


日本生態学会