| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-02  (Oral presentation)

都市緑地における夜間人工光が ジョロウグモの空間分布に与える影響
Influence of artificial light at night on the spatial distribution of Trichonephila clavata in urban green spaces

*布施舜, 吉田智弘(東京農工大学)
*Shun FUSE, Tomohiro YOSHIDA(Tokyo Univ. Agri. Tech.)

都市の夜間人工光は、人間や動植物の健全性に負の効果をもたらす、都市生態系に対する脅威としてよく知られている。しかし、夜間人工光に誘引されるなど、周辺の生物の生活史や群集構成に対する直接的な影響は明らかにされているが、それらを捕食する高次栄養段階の生物を対象とした間接的な影響の報告はまだ少ない。造網性クモ類は、採餌場所に一定期間定住し、長期間に渡って夜間人工光の影響を直接的・間接的に受け続けるため、都市生態系における夜間人工光の影響を確認するのに最適な分類群である。そこで本研究では、東京都の都市緑地公園内に生息するジョロウグモを対象に、夜間人工光の影響の調査を行った。GPS測位装置を用いて街灯とクモの網の位置図を作成し、ジョロウグモの網サイズを測ることで、ジョロウグモの空間分布と造網行動に対する影響を確認した。また、調査緑地内を夜間人工光の照射区と非照射区に区分し、各区分でジョロウグモを捕獲後、腿節長と体重を測定することで、形質への影響を調べた。調査の結果、照射区ではジョロウグモの生息密度が上昇し、街灯が周辺にあると網サイズは縮小する傾向を示した。これは、夜間人工光の周辺ではジョロウグモが利用できる餌資源量が多いため、生息密度の増加と網への投資コストの減少につながったことを示唆している。一方で、照射区と非照射区で捕獲したジョロウグモの形質に違いは見られなかった。この理由として、夜間人工光による影響以外にも周辺の土地利用の差など、様々な要因が作用しあったためと考えられた。


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