| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-05 (Oral presentation)
食性は、生物の生態や生活史と密接に関わり、生態系の理解に欠かせない。日本の河川河口域の生態系では、ハゼ科魚類が優占しており、本科の食性の解明は河川生態系を知る上で重要である。島嶼は、地理的、地形的に特徴的な環境を有し、特有の生態系が見られる。そこで本研究では、日本海の離島である佐渡島の河川に広く分布するハゼ科ウキゴリ属魚類に着目し、潜在的な餌資源である底生生物と併せて、詳細な食性を明らかにすることを目的とした。
佐渡島の12河川で2020年から2022年、島嶼間の比較のため、隠岐(島後)の4河川で2022年10月に調査を行った。各回、ウキゴリ属 (ウキゴリ、シマウキゴリ、スミウキゴリ) 約10個体と、流速の異なる2地点において底生生物を定量採集した。ウキゴリ属魚類の胃内容物の餌生物と底生生物について科レベルまで同定を行った。
底生生物は計94分類群が確認され、水生昆虫を中心とした多様な分類群で構成されていた。中でも、ユスリカ科は、底生生物、胃内容物の双方で最も個体数が多く、佐渡島のウキゴリ属はユスリカ科に対して正の選択性があった。一方、携帯型の巣を持つトビケラ類は底生生物中で個体数が多かったが、ウキゴリ属は負の選択性を示した。また、複数の陸生動物が胃内容物から確認された。これらより、ウキゴリ属魚類は、視覚的な捕食者であり、鉛直方向に広がる餌資源利用を行う非特化無脊椎動物食者と考えられる。主成分分析より、3種のウキゴリ属魚類は、島嶼の河川ではそれぞれ異なる微小生息環境を利用していることが明らかとなった。他の2種と比較して、流速のはやい地点を利用していたシマウキゴリから陸生動物が多く確認されるなど、微小生息環境により食性がわずかに異なる可能性が示された。本研究の結果は、淡水性魚類の餌資源利用と分配について重要な知見となると考えられる。