| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-10 (Oral presentation)
農作物に発生する病害虫の被害を抑えるために、病害虫の発生を予測する手法が開発されてきた。従来は、過去のモニタリングデータをもとに、統計的なモデルをあてはめる試みが一般的であったが、近年では機械学習手法が注目されている。いずれのアプローチについても、予測精度が他方よりもすぐれていたという研究が存在しており、この2つのアプローチの特徴を整理することが必要である。我々は、日本の主要4作物について記録されてきた病害虫のモニタリングデータセットを用いて、2つの統計モデルと7つの代表的な機械学習手法の予測能力を比較した。説明変数として月平均気温、月降水量、地理情報を用いた。作目や病害虫種の違いにかかわらず予測精度の向上を評価するために、RMSEを標準化した値を用いて手法を比較した結果、決定木、ランダムフォレストが最も優れており、回帰モデルは統計的手法(重回帰)、機械学習手法(LASSO、Elastic Net)のいずれでも相対的に劣ることがわかった。また、分類アルゴリズムの予測性能は、特にデータに偏りがある場合や少ない場合に優れており、ベイズモデルの予測性能は、データが多いほど優れていた。したがって、統計モデルか機械学習のいずれがよいかという問題は、データのサイズや偏りに応じて決まっており、データの偏りや欠損が多い場合は分類アルゴリズムを用いた機械学習手法の成績がよい可能性があるといえる。