| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-01 (Oral presentation)
イモゾウムシは、幼虫が甘藷の塊根を食害する世界的な害虫であり、国内では奄美諸島以南の南西諸島及び小笠原諸島に分布している。沖縄県の津堅島では、2008年から、不妊虫放飼法 (人工的に増殖・不妊化した虫を野外に放飼し、野生虫間の正常な交尾・繁殖を妨げる防除方法)を用いた根絶防除事業を実施している。しかし、近年の大量増殖用飼料の転換に伴う放飼不妊虫数の減少などにより、島全体のイモゾウムシの総個体数は下げ止まっている。限られた不妊虫で根絶を達成するためには、島内のイモゾウムシの空間分布・生息個体数を把握し、不妊虫放飼の空間配分を最適化する必要がある。本研究では、イモゾウムシの個体群動態に関するN混合モデルを構築し、島内の主要な野生ホスト群落に設置したトラップ及び野生ホストの寄生率調査による1年間のモニタリングデータを適用することで、イモゾウムシの空間分布及び個体数の推定を試みた。その結果、群落毎の個体数は、多くとも数百頭程度、島全体の総個体数も数千程度と推定された。不妊虫放飼法を用いた根絶では、一般に、野生虫の個体数の10倍の不妊虫が必要と言われており、現状の不妊虫生産数 (30万頭/週)でも、理論上は十分にイモゾウムシの根絶は可能であると考えられる。また、未だ根絶に至らない原因は、現状の放飼不妊虫の空間配分が不適切であるためと予想された。今後は、同様のモデルを用いて不妊虫の防除効果の定量化及び不妊虫の空間配分の最適化を行う予定である。