| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-02  (Oral presentation)

オオセンチコガネの構造色のバリエーションを生み出す遺伝的基盤の探索
Exploring the Genetic Basis for Structural Color Variation in Phelotrupes auratus

*中谷優介, 佐々木江理子(九州大学)
*Yusuke NAKATANI, Eriko SASAKI(Kyushu Univ.)

昆虫は地球上の全生物種数のうち半数以上となる約92.5万種が知られており、進化の過程で様々な形質を獲得してきた。形質の多様性は種内の遺伝的な変異によって生じ、自然選択を受けて幅広い環境への適応を可能にし、多くの種の分化につながった。様々な形質の中でも擬態や性選択、体温調節に関わる体色は重要な環境適応形質として知られ、古くから研究が進められてきた。体色のバリエーションは色素によるものと、多層膜などの微細な構造の違いによって作り出される構造色があるが、特に構造色は制御機構が複雑で遺伝的基盤は明らかになっていない。本研究では構造色のバリエーションを生み出す遺伝的基盤の解明を目的とし、構造色の種内多型が見られるオオセンチコガネPhelotrupes auratusを対象とした遺伝学的な解析を行った。本種は赤、緑、青の構造色のバリエーションがあり、日本に広く分布しておりサンプリングが容易である。しかし、累代飼育が困難で交配実験による検証が不可能であることに加え、形質に地理的なクラインが見られるなど集団構造が強く、遺伝学的な解析が困難である。この課題を解決するために、本種の赤と緑の個体が共に観察され、自然交配が生じていると予想される宮崎県串間市都井岬の集団を用いて解析を行った。赤と緑の個体の地理的分布頻度や分子系統解析から都井岬集団は集団構造のない集団であることが示唆されたため、ショートリードシーケンス法を用いて、赤と緑の個体のDNAをゲノムワイドに比較し、形質特異的なゲノム領域を検出した。さらに、相同性検索によって候補領域内の遺伝子の機能性について予測を行った。本発表では、これらの結果について議論する。


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