| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-04 (Oral presentation)
トウヨシノボリは全国の河川に生息しているハゼ科魚類であり,琵琶湖流入河川に生息している個体群は,琵琶湖との両側回遊魚である.本種は6月から7月に産卵し,孵化した仔魚は琵琶湖へ降湖する.1ヵ月ほど湖内で成長した後,7月下旬から8月末までの間に琵琶湖流入河川に遡上する生態を持つ.そのため,河川の表流量が減少し,河床が露出して表流水が途切れてしまう状態である瀬切れが夏場に発生すると本種の遡上が阻害されてしまう.先行研究において瀬切れが発生している河川では,当歳魚の遡上が少ないことが示唆されている.また1歳魚以上の遡上指数から過去の瀬切れ規模などが推定可能であると考えられたが,本種の寿命や体長からの年齢推定についての研究が無いため,具体的な年数などが求められなかった.そこで本研究では琵琶湖流入河川におけるトウヨシノボリの主鰓蓋骨を用いて年齢を推定し,体長などとの関係について調べることを目的とした.調査は滋賀県東部を流れる愛知川においてトウヨシノボリが採取できた3地点で行った.採取は2022年の6月,8月,12月の計3回行った.その結果,6月は0歳(2021年の当歳魚)~2歳の個体が採取された.8月と12月には遡上してきた当歳魚と1~3歳の個体が採取された.U検定を用いて年齢間で平均体長(mm)の差を比較した結果,8月では当歳魚と1歳魚,2歳魚の各間で有意な差が見られ,12月では1歳魚と2歳魚との間で有意な差が見られた.6月はどの年齢間でも差は見られなかった.これらから1歳魚と2歳魚の平均体長には差があり,2歳魚と3歳魚では個体差が大きく体長からの年齢推定は困難であることが考えられた.また滋賀県のトウヨシノボリは成魚の場合,体長が50mm以上になるものが多いとされているが,今回は最大で約40mmであった.他河川との比較が重要となるが愛知川では4年以上生息が困難,または体が大きくなりにくい環境である可能性が考えられる.