| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-08 (Oral presentation)
昨今わが国ではニホンザルによる農作物や生態系への被害が深刻化しており、捕獲による個体数調整の重要性が増している。野生動物の捕獲の際には遺伝的な撹乱を最小限に抑え、種本来の遺伝的多様性を維持することが求められる。中国・四国地方の東部は、先行研究で定義された東日本タイプと西日本タイプの境界域にあたり、異なる複数の系統が混在するため、遺伝的多様性を維持する上での重要度が高い地域であると考えられる。しかし、中国・四国地方のニホンザルの遺伝的モニタリングは十分に行われておらず、詳細な分析が必要である。そこで香川県小豆島のニホンザル個体群を対象とし、ミトコンドリアDNA調節領域446bpの塩基配列に基づいて遺伝的多様性や系統地理、個体群の成立過程について分析した。130検体の分析の結果、4種類のハプロタイプが見つかった。3種類は近畿地方や東海地方で見つかっている配列と一致し、先行研究で定義されている東日本タイプに分類された。他方残りの1種類は岡山県で見つかっている配列と類似し、西日本タイプに分類されたものの、既報の配列と異なっていた。東日本タイプの1種類が全体の76%を占め、島内に広く分布する反面、残りの3種類の発見割合は低く、分布は局所的であった。本発表では小豆島で多様なmtDNAハプロタイプが見られる理由について考察するとともに、適切な保護管理のための提言をおこなう。