| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) D03-09  (Oral presentation)

沖縄島北部の老齢林における哺乳類および鳥類による樹洞利用の季節変化
Seasonal changes in use of tree-cavities by mammals and birds in mature forests in northern part of Okinawajima Island, Japan

*東哲平, 小林峻(琉球大学)
*Teppei HIGASHI, Shun KOBAYASHI(University of Ryukyu)

樹洞に営巣する哺乳類や鳥類にとって樹洞は繁殖のために利用する森林の重要な環境である。しかし、樹洞は時間をかけて生成されるため、森林内でその数は限られている。沖縄島北部の森林は樹洞密度が世界的にも高く、その樹洞を多様な動物が利用している。本研究では、沖縄島北部老齢林において鳥類および哺乳類樹洞利用の季節変化を明らかにすることを目的とした。
沖縄島北部の80年以上伐採歴のない老齢林において、2020年12月から2022年11月までの2年間、自動撮影カメラ計42台を樹洞の入口に向けて設置し、樹洞を利用する哺乳類と鳥類を撮影した。季節は12―2月を冬季、3―5月を春季、6―8月を夏季、9―11月を秋季に区分して樹洞利用動物ごとに、行動や撮影頻度を比較した。各季節の撮影頻度として、稼働日数1000日あたりの撮影回数を算出して解析に用いた。
計13種の哺乳類と鳥類による樹洞利用が撮影された。ケナガネズミ、クマネズミ、ノグチゲラ、ホントウアカヒゲが高頻度で樹洞を利用しており、撮影頻度に季節変化がみられた。ケナガネズミの撮影頻度は、繁殖期である冬季に35.7±166.2回(カメラ1台あたりの平均撮影頻度±標準偏差)であったが、秋季には撮影されなかった。クマネズミは春季に16.9±97.4回、ノグチゲラは秋季に25.6±118.4回撮影され、両種ともほかの季節では4回以下と撮影頻度は低く、樹洞で採餌する行動が多く撮影された。ホントウアカヒゲは1年中撮影頻度が高く、繁殖期(4―6月)である春季には78.6±314.2回と最も撮影頻度が高くなった。撮影頻度の高かったケナガネズミは繁殖期に樹洞で営巣することが撮影頻度の季節変化に関係したと考えられる。また、ホントウアカヒゲは繁殖期には樹洞を営巣場所として利用し、非繁殖期は採餌場所として利用していたため、1年中利用が多くなったと考えられる。本研究から樹洞に営巣する種以外の動物でも、採餌場所として樹洞は重要であることが示唆された。


日本生態学会