| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) D03-11  (Oral presentation)

時系列データを用いるデータ駆動的なメカニズム推定法の開発と検討
Development and examination of data-driven methods of estimating process using time series data

*岩下源, 近藤倫生(東北大学)
*Gen IWASHITA, Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

多種の時系列にどれだけ非線形な変動成分が含まれているかを定量できれば、生物群集の動態の状況依存性を知る一つの尺度として利用できるだろう。なぜなら、非線形な動態では、変数の入力と出力の比は一定ではなく、これは入力の変化が出力の変化に与える影響は状況によって変化する(状況依存である)ことを意味するからだ。
多種の時系列にどれだけ非線形な変動成分が含まれているかを定量するには、多種の時系列を複数の変動成分に分解する必要がある。これまで、多種の時系列を複数の変動成分に分解するには主成分分析(PCA)がよく使われてきた。PCAによる分解では分解した各成分は正規分布に従うという性質がある。しかし、非線形な変動は非正規分布に従う場合が多いので、分解した動態の時系列が従う分布を正規分布に歪めてしまうPCAでは、非線形な動態を誤った変動に分解する可能性がある。このようなPCAの利用がもたらすアーティファクトを避けるために、本研究では、信号解析や脳波解析でよく使われる手法である独立成分分析(ICA)を使用した、非線形変動成分の定量を提案する。ICAは各成分の時系列を複数の成分に分解する手法であり、ある時刻の分解した各成分の値がとる確率は独立だという性質がある。ICAは分解した各成分が非正規分布に従うことも許容する性質がある。
本研究ではICAを使用して、観測ノイズが含まれている多種の時系列に非線形な変動成分がどれだけ含まれているかを定量的に推定する手法を開発した。人工的な時系列データを用いて、数値実験で、ICAとPCAを比較することで、ICAによる手法の方が多種の時系列に含まれている非線形な変動成分の割合を抽出できることを確認した。


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