| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-01 (Oral presentation)
海藻類は、沿岸生態系の一次生産者として、原生生物から脊椎動物まで、幅広い生物に食料資源と生息地を提供している。海藻は微視的な胞子を数百万から数億個放出して生殖する。しかし、海岸では限られた数の若い海藻しか観察できない。この非常に高い胞子死亡率の原因はよく分かっておらず、海藻の個体群動態と生活史の理解を妨げている。繊毛虫は沿岸環境のいたるところに生息しており、微細藻類やバクテリアなどを捕食し、魚類などに捕食されている。今回我々は、北海道と千葉で採集した5種の緑藻を詳しく調べることで、藻体に付着した様々な種類の繊毛虫が胞子を旺盛に捕食していることを報告する。被食実験により、繊毛虫の捕食は海藻胞子の生存率を有意に下げること、その影響は繊毛虫の種類によって異なることが示された。胞子サイズは多くの海藻種間で似ているため、この相互作用は沿岸群集で潜在的に広くみられる可能性がある。本研究は沿岸生態系と食物網において大きく見過ごされてきた相互作用を指摘する。海藻は11,000種、底生の繊毛虫は3,000種が知られている。この相互作用をよりよく理解することは、沿岸生態系における海藻の役割と動態を理解するうえで重要である。