| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-03  (Oral presentation)

クズハキリバチはどんなクズ葉を切りまくる?
Clarification of the leaf traits as its nesting materials in Megachile pseudomonticola

*吉田風音, 平岩将良, 早坂大亮(近畿大・農)
*Kazane YOSHIDA, Masayoshi HIRAIWA, Daisuke HAYASAKA(Fac. Agr., Kindai Univ.)

花粉媒介を介して植物多様性の維持に大きく貢献する送粉者が,近年,開発に伴う生息地の喪失や農薬などの人為的影響により激減している.なかでも,ハナバチ類は高い花粉媒介能力を有するため,生態系サービスの維持に欠かせない.たとえば,マメ科植物などの有力な送粉者であるクズハキリバチは,1府10県でレッドデータに指定されるほど減少傾向が著しい.本種は営巣の際に,特にクズの生葉を裁断して利用するなどクズへの依存度が高い.しかし,わが国においてクズは強害雑草と認識されており,各地で防除の対象となっている.クズの管理次第では,量的・質的を問わず,本種が利用するクズそのものに影響が及び,結果,正常な巣の構築を困難なものにする可能性も否定はできない.しかし現時点で,本種が利用するクズの特徴すら分かっていない.そこで本研究では,クズハキリバチの減少要因の一端を解明すべく,本種が巣材に利用するクズの特徴(葉の形質,株内での裁断場所等)を明らかにした.巣材利用されやすい葉を特徴づけるため,葉の若さ(クロロフィル量)や裁断葉の地面からの高さの他,クズ群落内での裁断株の特徴(開空度)を測定した.調査の結果,着生位置が低く,クロロフィル量の低い,若い葉を有意に利用していた.さらに,開空度の低い,葉群で覆われた葉を有意に裁断していた.本種は裁断中,無防備になり,鳥類などの天敵に襲われる可能性があるため,外敵から発見されにくい微環境を裁断場所として選択している可能性が考えられた.一方で,本研究はあくまで,クズハキリバチの巣材利用に適したクズの特徴を明らかにしたにすぎず,クズ群落の生育環境の実態と本種の動態とを直接的に結びつけるものではない.今後,本種の個体群密度と巣材選択(微環境,クズ葉の現存量)との関係を明らかにして本種の減少要因を特定し,保全につなげたい.


日本生態学会