| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-02 (Oral presentation)
昨今の気候変動により気温変動に対する植物の時間的な応答はますます注目されている.先行研究において,開花フェノロジーに焦点を当てられていたのに対して,果実・種子成長のフェノロジーはそれほどではない.日本を含む中緯度地域では気温の明瞭な季節変動があり,春先と晩秋の低温はポリネーションや果実成長を介して繁殖成功に影響するかもしれない.本研究では,開花・果実成長の両方に着目し,繁殖フェノロジーと繁殖成功の関係をさぐるため,北海道の冷温帯湿原における虫媒花植物群集のフェノロジー構造と果実生産を調べた.個々の植物種の開花期の気温は開花開始が遅いほど高くなり,果実成長期の気温は初夏に咲く植物種で最も高くかった.結果率(繁殖成功)は繁殖期の気温と正の相関を示した.春先には開花期の低温が送粉者活性の低さにより,また晩秋には果実成長期の低温が果実成長速度を制限することにより,果実生産が制限されていることが示唆された.これらは,果実生産の制限要因が群集内における個々の種の開花フェノロジーに応じて異なることを示している.本発表では,季節変動の小さい群集での繁殖パフォーマンスと比較しつつ,気温の季節変動と繁殖様式の連関を議論する.