| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-06 (Oral presentation)
タケ(イネ科)は数十年から一世紀を超える寿命で一回繁殖性を示すことが一般に知られる。しかし、実際に発芽から開花・枯死までを追跡し、開花までの年数(開花年限)や枯死までの年数(寿命)を明らかにすることは非常に困難である。この課題に対して日本国内では、多世代の研究者間の連携によって、タネや開花後の再生竹を植えたタケを開花・枯死するまで栽培し、開花年限等を明らかにしようという大実験が行われている。20世紀初頭より各種タケで行われており、モウソウチクでの調査事例が主である。モウソウチクでは、部分開花時に得られたタネを蒔いたものが栽培され、発芽から主に67年目に一斉開花したという記録がこれまで2系統で報告されている(1979年と1997年)。本研究では、筆者らが2021年7月と2022年7月に、京都大学上賀茂試験地および富士竹類植物園において、新たに3系統の実生由来のモウソウチク植栽区で一斉開花を確認したことを報告する。開花時の林齢は、過去の栽培記録、残された石標、両施設のスタッフらへの聞き取りに基づき、1系統で66 年、2系統で67年と推定した。先行事例と合わせて考えると、日本国内のタケ見本園には、66–69年(主に67年)の年数で一斉開花するモウソウチク系統があることがわかった。一方で、株分けされて日本各地へ広がり、およそ単一のクローンから構成されると考えられているモウソウチク林では、中国より導入後およそ300年が経過する中で一斉開花の記録が知られていない。このことから、モウソウチクの繁殖特性などの生活史の様式には種内で変異があることもわかった。今回の発表では、珍しい開花記録の報告に留まらず、調査対象のモウソウチク3林分で2023年2月までに継続した観察や調査から明らかになった開花習性、結実状況、開花後の衰退過程も紹介する。また、今後もこうした研究を繋ぐ上で課題となっていることや、発表者らの今後の研究展望についても議論したい。