| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-07  (Oral presentation)

モミ林内における散布種子群への親集団の個体サイズと散布距離に依存した雌雄繁殖寄与
Paternal and maternal contributions to the seed pools dependent on parent tree size and dispersal distance in an Abies firma population

*岩泉正和(森林総研林育セ九州), 木村恵(森林総研林育セ), 高橋誠(森林総研林育セ), 矢野慶介(森林総研林育セ東北), 宮本尚子(森林総研林育セ東北), 那須仁弥(森林総研林育セ東北), 生方正俊(森林総研林育セ北海道)
*Masakazu G. IWAIZUMI(FTBC Kyushu, FFPRI), Megumi K. KIMURA(FTBC, FFPRI), Makoto TAKAHASHI(FTBC, FFPRI), Keisuke YANO(FTBC Tohoku, FFPRI), Naoko MIYAMOTO(FTBC Tohoku, FFPRI), Jin'ya NASU(FTBC Tohoku, FFPRI), Masatoshi UBUKATA(FTBC Hokkaido, FFPRI)

モミ(Abies firma)は中間温帯の主要構成樹種の一つであるが、天然集団の分断化・孤立化が著しく、残存集団の保全が急務である。これまで発表者らはモミの地域集団内での遺伝的多様性の維持機構について検討するため、散布種子群の遺伝的組成と集団内の寄与親の構成を核SSRマーカーに基づき配偶子レベルで解析し、集団外から雌雄の両配偶子による移入が認められるとともに、雌雄の配偶子間の遺伝的異質性が高いこと、また上記の要因として成木個体の雌雄親としての寄与の比率には親間差があることを明らかにした(Iwaizumi et al. 2022)。これまでも樹木(特にモミ属)集団内の散布種子群への成木個体の繁殖寄与の違いには、遺伝的要因や個体サイズ等に依存する雌雄への相対的な繁殖努力の違い(Arista & Talavera 1995;岩泉ら 2021)や雌雄配偶子間の散布範囲の違い(花粉飛散による雄性配偶子の散布距離は大きい:Lian et al. 2008;Iwaizumi et al. 2022)等が関与すると考えられてきた。しかし、それら複数の要因がどのように関わって繁殖寄与の違いをもたらし、次世代の遺伝的多様性創出につながっているのか、その機構は明らかではない。そこで本研究では、福島県いわき市に所在するモミ天然集団内でこれまで得られた3豊作年における散布種子群の遺伝解析により推定した遺伝子流動データ(Iwaizumi et al. 2022)と成木個体の集団構造データ(個体の配置、個体サイズ等)を統合して解析し、散布種子群への成木集団の雌雄繁殖寄与におけるサイズ依存性と散布距離依存性の両者を同時に評価した。その結果、雄性繁殖寄与ではサイズ依存性の影響が大きかったが、雌性繁殖寄与ではサイズ依存性と散布距離依存性の両者が有意に影響しており、雌雄間で異なる依存性が作用している可能性が考えられた。


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