| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-09 (Oral presentation)
ごく小さいものから大きなもの、綿毛状の冠毛を持つものやトゲやかぎ爪を持つものまで、植物の種子形質は多様性に富んでおり、これらは、固着性である植物の新たな環境への分散・定着プロセスにおいて重要な役割を果たしている。近年、人間活動に伴う環境改変は激しさを増しており、人為的分散が群集動態に与える影響や人工環境下への侵入・定着プロセスを理解することは、植物生態学や侵入生態学において注目を集めている。
都市環境下や農業生態系でよくみられる、道路上の雨水の排水や農業用水の給排水のために作られた側溝においては、非意図的な植物の侵入や定着がしばしば発生している。このような場合、草本類の定着や過繁茂が側溝の機能を大きく低下させる要因となり、内水氾濫の被害等を助長しうる。また、側溝が植物に新たな空きニッチを提供することで、侵略的な外来種の侵入・定着を促進しうるかもしれない。そのため、側溝内への植物の侵入・定着プロセスを明らかにすることはその管理や在来生態系の保全の上で重要であるにも関わらず、関連する知見は十分でない。
そこで本研究では、側溝における草本植物の定着プロセスについて、特に種子の形質と側溝内における残存可能性の関係を明らかにすることを目的に、人工水路を用いた種子流動実験を行った。実験では、野外から採取した種子散布様式や形態的特徴が異なる様々な草本植物の種子について、U字溝を連結して作成した人工水路内で流水に曝し、種子の水路内での残存可能性を調査した。結果から、側溝内に定着しやすい植物種の特徴について考察を行う。