| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-11  (Oral presentation)

都市環境における植物形質の進化
Evolution of plant in urban environment

*藤田知弘(国立環境研究所), 深野祐也(千葉大学), 小出大(国立環境研究所), 井上智美(国立環境研究所)
*Tomohiro FUJITA(NIES), Yuya FUKANO(Chiba Univ.), Dai KOIDE(NIES), Tomomi INOUE(NIES)

はじめに:都市化に伴う環境変化が生物の進化を引き起こすことが近年、知られるようになってきた。都市では、ポリネーターとの相互作用といった 生物的要因や、ヒートアイランドなどに起因する温度変化などの非生物的要因が、耕作地とは異なり、これらがドライバーとなって生物進化を引き起こしている可能性がある。しかし、都市における生物進化については研究例が少なく、メカニズムの解明が求められている。本発表では一年生草本植物スベリヒユを対象に都市と耕作地における繁殖 形質の差異を解析した結果を報告する。
手法:東京都の都市部(9個体群)及びその周辺耕作地(9個体群)で合計98個体のスベリヒユから種子を採集した。採集した種子を温室内の同一条件下にて栽培し、母性効果を軽減することを目的にF2世代を創出した。F2世代を用いて、形質 (花タイプ(以下結果を参照)、フェノロジー、種子重量等)の測定を行った。
結果:スベリヒユは開放花のみを産する個体(開放花型)と閉鎖花のみを生産する個体(閉鎖花型)が存在することが先行研究から知られている。測定の結果、都市由来の個体では耕作地由来の個体に比較し、閉鎖花型の出現割合が高かった。また、閉鎖花型は開放花型よりも10日以上早くに花芽形成を開始する傾向にあることが明らかになった。ポリネーターの訪花頻度が少なく、ヒートアイランドによる夏季の気温上昇が大きい 都市では、閉鎖花型を早い時期につけることが有利になるのかもしれない。本研究によって、スベリヒユでは、都市化に対応して花の生産機構が遺伝的に分化している可能性が示唆された。


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