| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-02  (Oral presentation)

生命画像解析の前処理を効率化するパイプライン構築 3 D再構築のためのマスク画像生成
Development of a pipeline for pre-processing of bioimage analysis: mask image generation in 3D reconstruction

*染野大輝, 野下浩司(九州大学)
*Daiki SOMENO, Koji NOSHITA(Kyushu University)

人口増加、栽培地の限度、環境変動などの制約ある状況下で時間効率と生産性の高い植物栽培手法が求められている。これらを解決するために植物フェノタイピングを含む網羅的な定量解析の開発が進められている。特に表現型データにおいては3次元計測の発展が進んでいる。
本研究ではダイズ画像を対象に、従来の3次元再構築手法SfM (Structure from Motion) /MVS (Multi-View Stereo)に見られる問題点を克服するための解析パイプラインの提案を試みた。本研究では、4つのパイプラインを比較・検討し、3次元再構築の正確性と処理速度の観点から比較検討した;1. 従来同様のSfM/MVS処理、2. SfMの前にダイズマスク画像を設定した処理、3. SfMの後にダイズマスク画像を設定した処理、4. SfMの前にダイズ及びステージマスク画像を、SfMの後にダイズマスク画像を設定した処理。従来手法(1)では他の対象物も再構築されてしまい背景由来のノイズがダイズに付着する問題点が観察された。また、画像全体が処理対象となるため処理時間がかかった。マスク画像を挿入することで対象以外の再構築を抑制できるが、マスクの挿入にも適切な順番があり、(2)ではSfMの段階で画像間に見られる十分な対応点座標の取得が困難になり、成長ステージの早い小さい個体ではカメラ位置推定が上手く行かず葉の表面が粗くなることが分かった。一方、(3)ではカメラ位置推定に十分な対応点座標が取得でき、再構築するにあたりカメラの位置推定が維持されるため、(1),(2)の課題を克服した結果が得られた。また、(3)に加え、SfMの前にダイズとステージのマスクを設定することで、十分な対応点座標の取得と同時に背景参照の削減を考慮した(4)が正確性と処理速度の観点から最善なパイプラインだと結論付けた。ただし、マスク画像の自動生成の不正確性などの改善点も見られ今後の課題として取り組む必要がある。このパイプラインを軸としたSfM/MVS処理を植物フェノタイピングの定量解析に応用することに期待する。


日本生態学会