| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-04  (Oral presentation)

林床植物の細根形質と種組成:森林内の局所的な環境勾配に沿った変異種数
Fine root traits and species composition in forest understory plants: small-scale variation along a topographic gradient

*佐久間夕芽, 富松裕(山形大学)
*Yume SAKUMA, Hiroshi TOMIMATSU(Yamagata Univ.)

植物群集の集合過程を理解する上で機能形質を用いたアプローチは有効だが、多くの研究では地上部の形質が用いられており、根の形質を用いた研究は少ない。多数の植物で細根形質を分析した近年の研究では、種間変異が葉のような1次元ではなく、2次元のスペクトルによって説明され、変異の多くが菌根菌への依存度が異なる軸に沿って見られることが示されている。
 本研究では宮城県の山地渓流域に広がる夏緑樹林を対象として、林床植物群集における機能形質の斜面に沿った変異を調べた。林内に34ヶ所のプロット(25 m²)を設け、出現した林床植物とその被度を記録するとともに、63種の細根および葉の8形質を測定した。夏緑樹林には多様な林床植¬物が生育するが、山地渓流域では斜面を登るにつれて種組成が変化し、種多様性は低下する。一般に谷は湿潤かつ富栄養で、尾根は乾燥かつ貧栄養であること、細根よりも菌糸の方が土壌資源を広く探索できることを考えると、斜面の上部ほど土壌資源の獲得を菌根菌に強く依存する植物種が選別されている可能性がある。
分析の結果、形質の群集加重平均は斜面に沿って有意に変化し、根形質では斜面の上部において菌根菌への依存度が高い「アウトソーシング戦略」をもつ種が多く見られた。また、葉形質では斜面の上部において比葉面積(SLA)が小さいなど、「Slow戦略」をもつ種が多く見られた。このことから、斜面に沿った林床植物群集の違いを説明する上で、葉だけでなく細根形質への環境フィルタリングを考慮することが重要だと考えられた。一方、各形質のレンジや葉および根の機能的多様性には斜面に沿った変化が無く、種多様性の低い斜面の上部で環境フィルタリングが強く作用しているとは言えなかった。構成種の形質分布は、菌根菌への依存度が低い「DIY戦略」に偏っていたことから、斜面に沿った種多様性の変化は斜面上部の環境に適応した種が少ないことによる可能性が考えられた。


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