| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-05 (Oral presentation)
植物のストレス応答におけるプライミングとは、あらかじめ経験した弱いストレス刺激により、その次に経験する強いストレス刺激に対する応答性が高まる現象をさす。高温・凍結のような物理的ストレスも、食害・病害のような生物的ストレスも、季節特異的に生じる。そこで、日長や平均気温といった季節シグナルをプライミング刺激とし、ストレス要因がターゲット刺激となる「季節プライミング」が存在するのではないかと考えた。アブラナ科の野生植物ハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)を対象に、マルチインキュベータを用いて、検証実験を行った。日長とマイルドな温度変化とを組み合わせた8週間の季節環境を前歴として植物に経験させた。その後5日間、同一環境に置いたのちに、低温ストレスに対する遺伝子発現応答を調べた。トランスクリプトームを解析することで、前歴環境に依存して応答が異なる遺伝子を抽出した。その結果、季節プライミングが検出されたが、少数遺伝子の大きな発現変化ではなく、多数遺伝子の小さな発現変化としてみられた。