| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-02  (Oral presentation)

出現種の生育環境区分構成からみた都市近郊林の植物相の50年間の変化
Fifty-year changes in the flora of suburban forests from the perspective of the composition of the habitat classification

*島田和則(森林総研多摩科学園), 勝木俊雄(森林総研九州支所), 岩本宏二郎(森林総研多摩科学園), 大中みちる(森林総研多摩科学園)
*Kazunori SHIMADA(Tama For. Sci. Garden, FFPRI), Toshio KATSUKI(Kyushu Reseach Center, FFPRI), Kojiro IWAMOTO(Tama For. Sci. Garden, FFPRI), Michiru OHNAKA(Tama For. Sci. Garden, FFPRI)

都市近郊林は生物多様性を保全する上で、人口が集中し高度に開発を受けている都市域におけるホットスポットといえる。しかし、都市近郊林は都市化の進展など環境変化の影響を受けており、地域の生物多様性の源泉といえる植物相(フロラ)の長期変化を保全・管理などの基礎情報として把握する必要がある。しかし植物相の変化について、その要因を推測し保全策などの対応に反映させるためは、単に出現種数だけの分析では不十分であり、どのような種が増減したのかといった質的な分析も必要である。そのために東京都南西部の都市近郊林である森林総合研究所多摩森林科学園(旧浅川実験林)において、過去に公表されたフロラリスト(草下・小林 1953,林ほか 1965)と直近のフロラリスト(勝木ほか 2010)の比較により50年間の種構成の現状及び過去からの変遷について、生育環境区分(奥田 1997)を手がかりに質的な分析を行った。
その結果、照葉樹林・雑木林・人里タイプの種数は大きな変化がなかった。また、夏緑樹林・草原・水辺・高原タイプの種数は減少し、外来種数は顕著に増加した。これらの変化の要因としては、様々なスケールのものが考えられる。草原・水辺タイプの種の減少については、草地的環境の縮小および湿地環境の劣化といった局所的な要因によるものが考えられた。一方で、夏緑樹林・高原タイプの種は本調査地よりも冷涼な環境に生育の本拠があり、これらの減少は気候変動の影響といったより大きなスケールの要因が考えられた。このように、さまざまなスケールの環境変化の影響が植物相の変化に現れたものと考えられるが、これらについてはより詳細に分析する必要がある。


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