| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-08  (Oral presentation)

植物プランクトン群集を対象とした動的結合ネットワークのアグリゲーション
Aggregation of dynamically coupled networks for phytoplankton communities

*笠原剛樹, 近藤倫生(東北大学)
*Goki KASAHARA, Michio KONDOH(Tohoku Univ)

生物群集は互いの密度変化に影響し合う「動的に結合(dynamically coupling)」された個体群の集まりとして理解できる。最近になって、観測データから種間の動的結合を検出したり、群集の動的結合ネットワークを推定したりできるようになった。捕食-被食や相利等の群集ネットワーク研究では、大規模なネットワークのノードをまとめることで単純化し、計算量を削減したり見通しをよくしたりするアグリゲーションと呼ばれる方法がとられる。アグリゲーションにはデータや解析の性質に応じて様々な手法があるが,生態学では系統分類に基づくアプローチが取られてことが多い。この系統分類に基づくアグリゲーションの背景には,種間で結ばれる相互作用リンクが高次分類群でまとめたあとも保存されるとする仮定がある。しかし動的結合ネットワークにおけるアグリゲーション手法はほとんど研究されておらず、このリンク保存性を仮定できるかは不明である。そこで本研究では琵琶湖での39年にわたる植物プランクトン観測データと非線形時系列解析手法を使い、動的結合ネットワークにおいて、従来の群集ネットワークと同様にアグリゲーションにおけるリンク保存性があるか調べた。その結果、2種をアグリゲートしたグループが特定の種に対してリンクを持つかどうかは、アグリゲート前の2種と特定の種の間のリンクの数に依らないことがわかった。さらに、目・科・属等の上位分類階級間のリンクの在不在は、その分類階級に所属する種の間のリンク密度とは弱い関係しか認められなかった。以上の結果は、群集の動的結合ネットワークではアグリゲーションをする際に、リンク保存性が仮定できないことを示唆している。なお使用された観測データは滋賀県琵琶湖環境科学研究センターによるものである。


日本生態学会