| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-10  (Oral presentation)

仙台海岸における海岸林造成による節足動物生息環境への影響
The impact of coastal forest creation on arthropod habitats at the Sendai coast

*大越陽(北海道大学), 松島肇(北海道大学), 根岸淳二郎(北海道大学), 平吹喜彦(東北学院大学), 岡浩平(広島工業大学)
*Hinata OKOSHI(Hokkaido Univ.), HAJIME MATSUSHIMA(Hokkaido Univ.), Junjiro NEGISHI(Hokkaido Univ.), Yoshihiko HIRABUKI(Tohoku Gakuin Univ.), Kohei OKA(Hiroshima Inst. of Technology)

宮城県仙台海岸では東日本大震災からの復旧・復興事業による防潮堤の建設や海岸林造成といった人為的改変が行われ, 海浜生態系への影響が懸念されている。中でも, 後者の海岸林造成には近隣丘陵地から持ち込まれた土砂を用いての盛土による土地改変が含まれている。この盛土による物理的環境の変化や海浜植物の生育阻害が指摘されている一方で, 昆虫相への影響に関する知見は乏しい。海浜生態系において, 昆虫は漂着物等による海からの栄養流入の分解者や媒介者となる点で重要な役割を担っている。そこで本研究では海浜に生息する徘徊性昆虫に着目し, 盛土がその分布に与える影響を明らかにすることを目的とした。調査対象地は宮城県仙台市荒浜地区の砂浜海岸とした。調査地では防潮堤の内陸部にて海岸林造成のための盛土が行われたが, 一部の場所では生物多様性配慮ゾーンとして盛土が行われていない。防潮堤, 盛土造成地, 非盛土造成地を横断するように, 原則として汀線と垂直に6本の調査ラインを設定した。ただし, 現地の状況に合わせて1本のみ帯状の非盛土造成地に沿って防潮堤に斜交するようにラインを設定した。各調査ラインに沿って, 汀線垂直方向に20 m間隔でピットフォールトラップを設置し徘徊性昆虫を採集した。設置点は盛土造成地で計21ヶ所, 非盛土造成地で計38ヶ所であった。採集は2022年5月2日から4日と9月2日から4日にかけて行い, トラップはそれぞれ約48時間ずつ設置した。結果, 防潮堤陸側で確認された種のうち, 約5割は盛土造成地と非盛土造成地の両方で確認された一方, 約4割は非盛土造成地でのみ確認された。また, 盛土造成地と非盛土造成地の両方で確認された種のうち, 主に海浜地や砂地に生息する種に着目すると, 非盛土造成地において盛土造成地と比べ多くの個体が確認された。これらのことから,海岸林造成に伴う盛土が昆虫の生息地喪失や個体数減少を引き起こす可能性が示唆された。


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