| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) F02-11 (Oral presentation)
SDGsの急速な広まり受けて農業分野においても、持続的な農業生産活動のあり方が望まれる。また、わが国の人口減少突入を受けて省力化の視点や、地域の生態系機能を活用した農法の開発も求められている。そのような中、中山間地域の水田に存在する棚田や谷津田の畦畔は適切に管理すれば高い生物多様性を維持できることが明らかになってきている。一方で刈払い等に費やす労力が多大で農家の負担になっていることも知られている。
本発表では、省力化を狙いながら生物多様性を保全、活用した畦畔管理のありかたについて考える。研究対象地において、刈払の頻度、時期、方法について考慮した野外操作試験区を複数地点設置し、コドラート法による植生調査ならびに、スィーピング調査による主要天敵・害虫の調査、カエル類の叩き出し調査を実施し、各生物群の変動を解析した。適切な時期に刈払いを実施した畦畔草地は生物多様性が向上しながら、斑点米カメムシのハビタットとして機能するイネ科草本の植被率が抑えられていた。主要天敵・害虫や大型の捕食性天敵として期待できるカエル類の変動にも違いが見受けられた。
これらの結果は、有機農業や環境保全型農業における持続的な畦畔管理にも活用できるとともに、「みどりの食料システム戦略」の推進にも寄与できると考えられる。