| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) F03-08  (Oral presentation)

針葉樹林における樹木の開花を通じたリターフォールと養分の供給量
Litterfall and nutrient supply through flowering in coniferous forests.

*齊藤真紀(秋田県立大学・院), 早川敦(秋田県立大学), 高階史章(秋田県立大学), 星崎和彦(秋田県立大学)
*Maki SAITO(Grad. Sch, Akita Pref. Univ.), Atsushi HAYAKAWA(Akita Pref. Univ.), Fumiaki TAKAKAI(Akita Pref. Univ.), Kazuhiko HOSHIZAKI(Akita Pref. Univ.)

 森林生態系の主な窒素(N)、リン(P)供給源として内部循環のリターフォール、外部循環の降水がある。葉リターは総リターフォール重量の大半を占め、重量の少ない花リターによる元素供給はあまり重要視されていない。また花粉は森林生態系への供給量がほとんど定量されていない。先行研究によると広葉樹では花リターや花粉は葉リターよりもNやPに富むため、重量としては少量でも重要な元素供給源になりうる。本研究では大量の花粉を生産するスギの林分を対象に、花リターと花粉によるN、P供給量の定量を3年間行った。そして葉リター、枝リター、降水によるN、P供給量と比較することでその貢献を評価した。スギの葉リター、花リター、花粉の全炭素、全窒素、全リン含有率を測定した結果、N、P含有率は花粉、花リター、葉リターの順に高く、C/Nは葉リター、花リター、花粉の順に高かった。次にリタートラップ調査を行い、各部位ごとのバイオマス量、N供給量、P供給量を推定した。花粉は室内実験で求めた花リターに対する花粉の重量比を花リター量に乗ずることで算出した。その結果、リターフォールによるN、P供給量に花リターが占める割合は、Nが3.0~21%、Pが3.6~27%であった。さらに花粉を考慮すると内部循環に供給されるN量が1.0~1.1倍、P量が1.1~1.5倍に増加した。また外部循環である降水も含めたN、P供給量に花由来(花リター+花粉)の供給が占める割合は、Nが2.8~15%、Pが8.7~31%であった。このことから、開花量による年変動はあるが、リターフォールによるN、P供給に花リターが占める割合は小さくなかった。また花粉を考慮することで、内部循環で循環するN、P量は従来よりも多いことが示唆された。花リターや花粉は葉リターよりも易分解性と考えられるため、開花の変動をふまえて森林生態系全体の元素循環量を再検討する必要があるだろう。


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