| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-02  (Oral presentation)

なぜ世界中の都市でカタバミの葉は赤く進化しているのか?【B】
Why oxalis leaves become red in cities around the world?【B】

*深野祐也(千葉大学), 矢守航(東京大学), 白澤健太(かずさDNA研究所), 佐藤光彦(かずさDNA研究所), 立木佑弥(東京都立大学), 内田圭(東京大学)
*Yuya FUKANO(Chiba Univ.), Wataru YAMORI(Univ. of Tokyo), Kenta SHIRASAWA(Kazusa DNA Research Institute), Mitsuhiko P SATO(Kazusa DNA Research Institute), Yuuya TACHIKI(Tokyo Metropolitan Univ.), kei UCHIDA(Univ. of Tokyo)

世界中で増加しつつある都市は自然環境と大きく異なる生物的・物理的環境を持つため、そこに生息する生物に強い進化的圧力を与え、時として急速な適応進化を観察できる。本研究では、世界で最も分布域の広い植物の1つ、カタバミに注目した。カタバミには緑の葉をもつ系統と、赤い葉を持つ系統(アカカタバミ)の顕著な種内変異がある。この葉色の変異は、樹木の紅葉のように温度や乾燥などといった環境ストレスで誘導されるものではなく、ほとんど可塑的に変化しない遺伝的な変異である。
われわれは、まず3種類の観察すなわち局所レベル(500mのライントランゼクト3地点)、景観レベル(数十キロ範囲の都市14個体群と緑地12個体群の比較)、全球レベル(ノルウェーからニュージーランドに至る、全世界9561地点の観察)によって、カタバミの赤葉の頻度が都市化に応じて増加することを明らかにした。そして、都市部で赤葉頻度が増加するという明確なパターンを生み出す適応進化プロセス(赤葉の利益とコスト)を、温室での栽培実験、野外での都市再現実験、実験室内での光合成活性の測定などを使って多角的に検証した。加えて、18集団181個体を対象にしたゲノムワイドなSNP解析を行い、赤葉進化の歴史を推定した。本研究は、世界中の都市でおきている生物進化として、誰でも、どこでも観察できる明確な進化の事例となるかもしれない。


日本生態学会