| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) G01-09 (Oral presentation)
陸産貝類のもつ殻は、乾燥や外敵から身を守るために存在すると考えられている。そのため殻を失うという進化は一見非適応的に見えるが、進化の過程で複数回多系統的に見られている。殻の退化は「ナメクジ化 (limacization)」と呼ばれ、軟体動物ではしばしばみられるからの形態変化である。複数回多系統的に見られることから、ある環境において殻の退化が適応的である可能性が考えられる。そこで本研究では、どのような環境で陸産貝類の殻の退化が起きるのか、生態的要因を探ることを目的とした。小笠原諸島の固有陸生貝類であるテンスジオカモノアラガイ属の2種を用い、詳細な生態調査を実施した。これらの2種は、通常のオカモノアラガイ類と同等の殻を持つ種と、それよりも退化した殻をもつ種が含まれており、過去の自身の実験より分子系統学的解析の結果単系統であることがわかっている。そのことから小笠原諸島に移入後にその形態変化が起きていることがわかる。したがって2種のニッチの違いを示すことで、殻の形態変化を引き起こす生態的要因が示唆されると考えた。2017年の自身の調査より、小笠原諸島母島の乳房山においては多数の間隙をもつツルアダンの密度が高い地点とオガサワラオカモノアラガイの個体密度に正の相関がみられたが、他の分布域において同様の傾向がみられるかは知られていない。本研究では、2021年冬と、2022年夏に調査エリアを広げて調査を行った結果を報告する。