| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-04  (Oral presentation)

創設様式が異なる真社会性ハチ目女王間での食道形態の種間比較【発表取消/Cancelled】
Interspecific comparison of esophageal morphologies among eusocial hymenopteran queens that found colonies in different modes【発表取消/Cancelled】

*栗原雄太, 宮崎智史(玉川大学)
*Yuta KURIHARA, Satoshi MIYAZAKI(Tamagawa Univ.)

 真社会性ハチ目の多くの種では、新女王が単独でコロニー創設するが、その過程で自ら採餌して最初のワーカーを育てる。この様式を非蟄居型創設とよぶ。一方でアリ科の特定のクレードでは新女王が自身の脂肪や筋肉を餌に転用して幼虫に与える蟄居型創設が獲得されている。また、この際に与えられる餌は胸部を通る食道の一部が拡張した「胸嚢」に貯蔵されることが知られる。我々は以前、蟄居型創設種のトビイロケアリの新女王を用い、中胸付近を通る食道の上皮組織とそれを覆う環状筋が肥厚しており、これらが薄く伸展されることで胸嚢を形成することを明らかにした。これらの結果を踏まえ、上皮組織や環状筋の肥厚が蟄居型創設種の指標となるのではないかと考えた。そこで我々は、胸嚢形成を可能にする食道の形態的特徴を明らかにするために、蟄居型創設種のアリ4種と、系統の異なる社会性種である非蟄居型創設種のアギトアリ、キイロスズメバチ、クロマルハナバチの新女王を用いて食道形態を比較した。
 解剖した新女王の食道表面をSEMで観察したところ、蟄居型創設種では食道表面に背腹方向に走る環状筋がみられた。一方、非蟄居型創設種のスズメバチでは前後方向に走る飛翔筋がみられたが、アギトアリやマルハナバチでは蟄居型創設種同様に背腹方向に走る環状筋がみられた。よって、真社会性ハチ目は系統によって環状筋が走る方向に違いがあり、アリとハナバチでは共通して背腹方向に走る環状筋をもつことが示された。続いて、アリ科の蟄居型創設種と非蟄居型創設種で組織切片を作成し、食道の断面の構造を観察したところ、蟄居型創設種では環状筋が特に厚く、その厚さは非蟄居型創設種のそれの約5倍に及んだ。これらの結果から、アリ科の食道壁では、背腹方向に走る環状筋の肥大化によって、環状筋の収縮による食道(胸嚢)内の餌の吐き戻しが可能になり、非蟄居型創設から蟄居型創設が進化した可能性が示された。


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