| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) G02-06 (Oral presentation)
頻度依存選択は多型を維持・喪失する駆動力になる。加えて、最近ではDNAシーケンサーの技術革新により、ゲノム全体に渡って多型データを得ることが容易になりつつある。多数の多型データと適応度成分の表現型データを用いて方向性選択をゲノムワイドに推定することは既に行われているものの、頻度依存選択を推定する方法は未だない。本研究では、(1) 適応度要素に対する選択勾配分析から頻度依存選択の正負と強さを推定する方法を提案し、さらに (2) 単遺伝子座の解析をゲノムワイド関連解析(GWAS)に拡張した。まず内容(1)について、遺伝的類似度を疑似形質とした選択勾配分析を用いることで、適応度成分における頻度依存性を推定する方法を考案した。これをシロイヌナズナ属Arabidopsis halleri subsp. gemmiferaおよびアオモンイトトンボ属Ischnura elegansの実データに適用したところ、既知の負の頻度依存淘汰を検出することが出来た。次に内容(2)について、単遺伝子座の解析を線形混合モデルに拡張することでGWASに実装した。これをシミュレーションで生成した仮想データに適用したところ、他の淘汰圧と区別しつつ頻度依存淘汰の正負を推定することができた。さらに、この手法でシロイヌナズナArabidopsis thalianaの花茎数データを解析したところ、正よりも負の頻度依存淘汰に関わる一塩基多型が多く検出された。一連の結果から、提案手法が動植物問わず広く適用できる可能性、および頻度依存淘汰の正負をゲノム全体にわたって推定できる可能性が示唆された。