| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) G02-07 (Oral presentation)
カニ(カニ下目)は横に移動する動物として知られるが、その適応的意義は未解明である。カニ、並びにヤドカリ下目でカニと形態が酷似した種には、前や後ろに移動する種も存在する。そこで本研究では、生存に深く関わる逃避行動を、異なる進行方向を持つ3種間で比較することで、横移動の適応的意義について考察した。
ベニツケガニ(横移動)、アサヒガニ(前移動)、イソカニダマシ(後ろ移動)に捕食者模型を近づけて逃避行動を誘発し、高速度カメラで撮影した。逃避方向は3種ともに捕食者と逆側であり有意な差はなかった。一方で、横移動種は他の2種に比べて、大きな回転を行わずに逃避することが分かった。この結果を踏まえて、幾何学モデルによって捕食危険領域から脱出するまでの時間を3パターンで比較した。その結果、前と後ろ移動では自身の進行方向側から捕食者に接近されると大きな回転が必要で脱出までの時間が長くなるのに対して、横移動では左右2つの進行方向により、どの方向から接近されても大きく回転せずに短時間で脱出できることが分かった。