| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-10  (Oral presentation)

二ホンウナギにおける3種類の逃避行動の解析:運動特性の比較及びその使い分け
Three types of escape behaviors in the Japanese eel: kinematic comparison and their selective use

*山田優弥(長崎大学), 長谷川悠波(長崎大学), 横内一樹(水産研究・教育機構), 河端雄毅(長崎大学)
*Yuuya YAMADA(Nagasaki Univ.), Yuuha HASEGAWA(Nagasaki Univ.), Kazuki YOKOUCHI(公式略称:FRA), Yuuki KAWABATA(Nagasaki Univ.)

【目的】ニホンウナギ( Anguilla japonica )は捕食者に対して前方遊泳、後方遊泳及び頭部後退運動と呼ばれる3種類の特徴的な逃避行動を示す。しかし、これらの行動における運動特性や使い分けに関する知見は乏しい。本研究では各逃避行動における潜時や速度、並びにその使い分けに影響を及ぼす要因の解明を目的とした。
【方法】刺激装置を用いてニホンウナギに接触刺激を加え、逃避行動を誘発した。一連の様子を上方と側方から計3台のハイスピードカメラで撮影した。上記の操作を2つの実験区分(刺激を加えた部位:頭部・尾部)で行い、各逃避行動の潜時や速度、並びにその使い分けに影響を及ぼす要因を調べた。更に、過去に実施された実際の捕食者(ドンコ)に対する本種の捕食回避実験の解析を行い、頭部と尾部を狙われた場合の捕食回避率の差異を調べた。
【結果】前方遊泳、後方遊泳及び頭部後退運動における潜時の間に有意な差は見られなかった( p = 0.58 )。しかし、刺激を加えた部位ごとの潜時は有意に異なり( p < 0.01 )、尾部を刺激した場合では頭部を刺激した場合よりも潜時が長くなった。各逃避行動の速度は有意に異なり( p < 0.01 )、頭部後退運動が最も速く、前方遊泳が最も遅い結果となった。また、各逃避行動の選択には刺激を加えた部位が有意に影響しており( p < 0.01 )、頭部を刺激した場合は主に後方遊泳と頭部後退運動を、尾部を刺激した場合は前方遊泳を示した。頭部と尾部で捕食回避率に有意な差は見られなかったものの( p = 0.16 )、尾部を狙われた場合、頭部を狙われた場合よりも捕食回避率が27 %低かった。以上の結果からニホンウナギは尾部からの攻撃に弱い可能性が示唆された。


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