| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) G03-01 (Oral presentation)
サハラ砂漠では、日中には致死的な高温になるため、ほとんどの動物は日陰に隠れているが、少数のサバクトビバッタは地表に留まり産卵している。本研究では、サバクトビバッタのメスがオーバーヒートすることなく産卵する現象について、西アフリカのモーリタニアにて野外調査を行った。産卵中のメスの多くはオスに背中に乗られていた。サーモグラフィカメラを用いて体表と地表の温度を測定したところ、産卵中のペアの体温は、地温よりも低かった。マルチサーマルレコーダーを用いて、束縛したペアまたは単体のオスかメスを日向に曝し、体温の変化を測定したところ、単体の個体の体温は高温になったが、ペアのメスの体温は低くなった。産卵はメスが腹部を地中に差し込んだ後、数時間かかり、この間ペアはすぐに逃避行動をとることができないため、被食のリスクが高まる。しかし、天敵が活動しない高温の時間帯に産卵することで被食リスクを下げていたと考えられる。産卵中に動けないメスは、交尾中の雄を「日傘」として利用することでオーバーヒートを防ぎ、この脆弱な期間を乗り越えていることが示唆された。