| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) G03-04 (Oral presentation)
農業現場においてアブラムシは、吸汁やウイルス媒介による深刻な被害をもたらす。これらの被害を軽減させるために化学的防除が行われているが、アブラムシの高い薬剤抵抗性が課題となっている。そこで、アブラムシの天敵生物を活用した「天敵農薬」の利用が注目され、なかでも、捕食者のナミテントウと寄生者のアブラバチは、既に農業現場で使用されている。農作物1株あたりの防除効果はテントウムシ>アブラバチだが、面積あたりの防除効果はテントウムシ<アブラバチである(飛翔能力を遺伝的に除去したテントウムシを利用するため)。この点を考慮すると、両種を併用することでより高い防除効果が得られると予想される。とは言え、もしアブラバチに寄生されたアブラムシをテントウムシが捕食すると、アブラバチによる防除効果の低下を招く可能性は否定できない。両天敵生物を併用した効率的な生物防除の実現・提案にむけては、寄生者による寄生の有無と捕食者の捕食選択性との関係を明らかにする必要がある。そこで本研究では、アブラバチ幼生の成長に伴う被寄生アブラムシの体色変化に着目し、寄生段階に応じたテントウムシの捕食行動を調べた結果を報告する。寄生段階は、被寄生個体内のアブラバチ幼生の形態と被寄生個体の色から3段階(潜伏期・亜致死期・致死期)に分けた。その後、ナミテントウに無寄生個体と被寄生個体を対峙させ、捕食選択試験を行った。その結果、ナミテントウは潜伏期および亜致死期の被寄生個体に対して、無寄生個体と区別することなく捕食したが、変色した被寄生個体に対しては、有意に捕食回数が減少した。これらの結果より、アブラムシが体色が大きく変化する致死期を迎えることによってナミテントウは、捕食行動を変化させる可能性が示唆された。