| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-07  (Oral presentation)

モグラ2種のミミズ採食行動に及ぼす頭骨形態の影響、特に因子間の多重共線性について
Effects of the cranial morphology of two species of moles on their earthworm-eating behavior  -especially on the multicollinearity among some factors

*横畑泰志(富山大学理学部), 富田晋平(富山大学理学部), 石川雄大(富山大学理学部, 現所属:若鶴酒造(株)), 高木南緒(富山大学理学部, 現所属:筑波大学)
*Yasushi YOKOHATA(Fac. Sci., Toyama Univ.), Shinpei TOMIDA(Fac. Sci., Toyama Univ.), Yudai ISHIKAWA(Fac. Sci., Toyama Univ., Pres. Add.:Wakatsuru Shuzo Co.), Nao TAKAGI(Fac. Sci., Toyama Univ., Present Adress: Tsukuba Univ.)

日本産モグラ類のうち、主に本州東部に分布するアズマモグラMogera imaizumii (以下、「アズマ」)と西日本に分布するコウベモグラ M. wogura (以下、「コウベ」)は競合関係にある。現在は一般的にコウベが優勢であり、その要因の一つとしてコウベのほうが吻幅が広く、主要な食物であるミミズを速く摂食できることが考えられる。演者らはこれまでにモグラによるミミズ(広義のフトミミズ類Pheretima spp.)の摂食行動に対する吻幅など頭骨形態の影響を飼育実験によって観察、検討してきたが、安定した結果は得られてこなかった。その理由として、ミミズの太さの正確な計測が難しく、全重量/全長の値を太さの指標としており、ミミズの全重量や全長を摂食量として用いることに対する多重共線性の問題が懸念されてきた。そこで、まずこれまでの実験データから、各説明変量間で分散拡大係数(VIF)を算出し、多重共線性の有無について検討した。
 過去の全てのデータを用いるとミミズの太さと摂食長、摂食重量の間に多重共線性の問題が認められたが(VIF=13.07)、モグラがミミズの一部を摂食しなかった場合のみで分析すると摂食長=全長にならないため、ミミズの太さと摂食長の間に多重共線性は認められなかった。そこで冷凍や低濃度酸素下で不動化したミミズを全長計測後に切断して実験を行い、過去の食べ残しのある場合のデータと共に、Rによる一般化線形混合モデルを用いて分析を行った(ランダム変数:モグラ個体)。目的変数には摂食時間、説明変数にはミミズの太さ、摂食長、モグラの吻幅を用いた。その結果、吻幅が広いほど摂食時間が短くなり(P=0.015)、ミミズの太さと摂食長の間に相乗効果があった(P=0.001)。吻幅が広いほうがミミズの摂食速度が速くなることが示されたので、今後例数を追加し、分析をさらに進める予定である。


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