| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-08  (Oral presentation)

機械学習による首輪カメラ映像内の他個体検出:モウコガゼルはいつ大群になるのか?
Group-size analysis of Mongolian gazelles using animal-borne cameras and machine learning throughout a year

*清水太朗(京都大学), 伊藤健彦(麻布大学), 小山里奈(京都大学), 菊池デイル万次郎(東京農業大学), UUGANBAYARMunkhbat(WWFモンゴル), CHIMEDDORJBuyanaa(WWFモンゴル)
*Taro SHIMIZU(Kyoto Univ.), Takehiko Y. ITO(Azabu Univ.), Lina A. KOYAMA(Kyoto Univ.), Dale Manjiro KIKUCHI(Tokyo Univ. Agr.), Munkhbat UUGANBAYAR(WWF Mongolia), Buyanaa CHIMEDDORJ(WWF Mongolia)

動物の群れ形成の実態把握は生態の理解や保全に不可欠だが,追跡が困難な種では,群れの動態の情報取得は難しい.モンゴルの草原に生息し,世界有数の長距離移動を行うモウコガゼルも,群れサイズの季節変化はこれまで不明である.小型化・長寿命化が進む動物装着カメラはこの問題を解決できる可能性がある.しかし,大量の映像データの解析は目視では困難であるため,機械学習を用いた自動解析が有効と期待される.そこで,カメラ付首輪を用いてモウコガゼルの群れサイズの季節変化を解明し,機械学習を用いて周辺他個体の自動解析手法を開発することを目的とした.2019年10月にモンゴル南部で成獣メスに毎日7-19時に毎時15秒間の動画を撮影するように設定したカメラ付首輪を装着し,自動脱落により1年後に1個体の首輪を回収した.全動画を対象に,500ピクセル以上の大きさで撮影された他個体数を目視で確認し,機械学習の一種である物体検出アルゴリズムYOLO v7を用いて周辺個体の自動検出モデルを作成した.目視確認の結果,日最大他個体数が1頭以下の日が61.2%と,群れサイズが小さい期間が長かったが,10月と2月,9月に頭数が増加する傾向があり,最大は18頭だった.自動解析では,誤検出が動画内の1フレームでのみ発生することが多かったため,複数フレームで連続して検出された場合のみを他個体と見なすフィルタを適用した.4フレーム適用時には,目視と自動解析の日最大個体数の相関係数は0.86,差が1頭以下の日の割合は88.9%だった.カメラ付首輪の映像解析により,モウコガゼルの相対的な群れサイズの季節変化をほぼ1年にわたって明らかにできた.この自動解析手法と多個体へのカメラ付首輪装着は,地域差や季節変化,年変動が大きいと予測される,モウコガゼルの群れ動態を解明するだろう.


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